
減価償却とは、償却可能価額(取得原価から残存価額を控除)を、所定の減価償却方法に従って、所定の耐用年数に亘って配分する手続きの事を言いますが、各規準によって、微妙な差異が見られます。
IFRS-SME:
残存価額、減価償却方法、または、耐用年数は、取得当初の見積りに基づいて決定されますが、これらに見直しが必要になった場合には、見積の変更として将来にわたって会計処理される事になります。なお、Full IFRSにおいては、少なくとも各事業年度末には、これらの見積りの変更が必要でないかどうかを再検討する事が求められていますが、SMEでは、見積の変更の必要性の兆候がある場合には変更する旨の取り決めになっています。(17.19,23)
また、減価償却は、資産が、経営者の意図した方法で利用可能となった時に開始され、資産の認識が中止された時に停止する。そして、減価償却は、資産が完全に償却された場合を除き、遊休となっていても、実際に使用されていなくても、停止しないとされています(17.20)。
US-SME:
これに対し、US-SMEにおいては、以下のような、IFRS-SMEとは異なる取り決めが定められています。
- 償却方法と耐用年数については、定期的なレビューが求められています(14.18)。
- 減価償却方法につき、特に信頼性を以って決定することが難しい場合には、定額法を採用する(14.16)。
- 売却目的の資産になった場合には、減価償却を中止し、その時点の簿価で引き継がれます(15.09)。
- 廃棄が決まった資産については、実際の使用期間までに耐用年数を見直し、その使用期日以降での減価償却の認識は不要とします(15.18)。
JP-SME:
JP-SMEにおいては、減価償却は、もっぱら法人税法の規定に従った方法になっているパターンが多いようです。理屈としては、IFRSやUSと同様に思えますが、実務上は、税法基準です。税法が変われば、会計方針も変わるという不思議な現象が時に発生します。また、実はおかしいとは感じていても、耐用年数の見直しなどは、基本的にあり得ません。
なお、日本基準に置いても、減価償却方法の変更は、見積の変更として、変更期と将来に向けて会計処理する事が認められています。