棚卸資産: 固定製造間接費の配賦

10.13

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IFRS-SMEとUS-SMEにおいては、固定製造間接費の扱いについて、以下の様な取り決めがなされています。(13.9、ないし、12.08)

「企業は、固定製造間接費の加工費への配賦を,生産設備の正常生産能力に基づいて行わなければならない。実際の生産水準が正常生産能力に近い場合には、実際生産水準を使うこともできる。生産水準が低下したり遊休設備が存在したりしたとしても、生産単位当たりの固定製造間接費の配賦額は増加させない。配賦されなかった固定製造間接費は、発生した期間の費用として認識される。生産水準が異常に高い期間にあっては、生産単位当たりの固定製造間接費の配賦額を減少させ、棚卸資産の評価が原価を上回らないようにする。(IFRS-SME 日本語版から拝借)」

なお、上記の正常生産能力とは、計画的な修繕等をしたうえで生じる生産能力の低下をも考慮した正常な状況において、一連の計算期間又は季節を通して平均的に達成されると期待される生産能力をいいます。

上記をまとめると、以下のようになります。

  1. 固定製造間接費の配賦は、原則として、正常生産能力に基づく見積配賦を実施する事。
  2. 不利差異は、すべて期間費用処理し、棚卸資産評価額には影響させない事。
  3. 有利差異は、棚卸資産評価額からも控除する事。

これに対し、JP-SMEにおいては、一切こうした点に関する記載はありません。
SMEとは言え、一企業として「正常生産能力」を把握している事を前提とした、IFRSやUSの取り組みに比較すると、やや見劣りするかもしれません。一応ながら、原価計算基準においては、以下のように、原価差異の取扱いについての規定がありますが、日本のSMEがこれを踏襲しているかどうかは不明です。

実際原価計算制度における原価差異の処理は、次の方法による。(第5章 47項)
1 原価差異は、材料受入価格差異を除き、原則として当年度の売上原価に賦課する。
2 省略
3 予定価格等が不適当なため、比較的多額の原価差異が生ずる場合、直接材料費、直接労務費、直接経費および製造間接費に関する原価差異の処理は、次の方法による。
 (1) 個別原価計算の場合:省略
 (2) 総合原価計算の場合:当年度の売上原価と期末におけるたな卸資産に科目別に配賦する。

すなわち、製造間接費に関わる原価差異は、原則として売上原価に賦課するものの、予定価格等が不適当のため、比較的多額の原価差異が生ずる場合には、それが不利差異であれ、有利差異であれ、売上原価と期末棚卸資産の両方に配賦するとされています。

仮に、日本のSMEがこの原価計算基準に準拠した場合、有利差異が発生した場合にはOKですが、不利差異が発生した場合には、常にPLチャージするというIFRSやUSとの間に差異が生ずる事になります。換言すれば、不利差異が生じている場合、すなわち、(予定)正常生産能力よりも、実際の生産実績が低かった場合、JPの棚卸資産評価額は、IFRSやUSよりも高くなってしまいますので、注意が必要です。

正常生産能力を把握したうえで、固定製造間接費を配賦しているSMEがどれだけあるか、はたまた、それが出来ていたとしても、不利差異を期末棚卸資産に影響させないSMEがどれだけあるか、懸念は深まります。

なお、日本の法人税法上の原価差額に対する規定は以下のようになっています。

  1. 少額の原価差額(総製造費用の概ね1%以内)は、調整不要(基通5-3-3、5-3-4)
  2. 不利差異については、調整が必要(基通5-3-5)
  3. 有利差異については、例外を除き、調整は不可(令32②)

上記の2と3については、IFRS-SMEと真逆の取扱になっていますので注意が必要です。

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