
資産、負債、収益及び費用の認識
2.27 認識とは、資産、負債、収益及び費用の定義を満たしかつ以下の認識規準を満たす項目を、財務諸表に組み入れるプロセスをいう。
(a) 当該項目に関連する将来の経済的便益が、企業に流入するか又は企業から流出する可能性が高く、かつ、
(b) 当該項目が信頼性をもって測定できる原価又は価値を有している場合2.28 当該規準を満たす項目を認識しない場合、採用した会計方針の開示又は注記若し くは説明資料のいずれによっても誤りを正したことにはならない。
将来の経済的便益の蓋然性
2.29 蓋然性の概念は、ある項目に関連する将来の経済的便益が企業に流入すること又 は企業から流出することについての不確実性の程度に言及するために、当初認識の規準において用いられている。将来の経済的便益の流出入に付随する不確実性の程度の評価は、財務諸表の作成時に利用可能な報告期間の末日時点の状況に関する証拠に基づいて行われる。この評価は、個別に重要な項目と個別には重要性 のない項目が多数集合したグループについて、個別に行う。測定の信頼性
2.30 ある項目を認識するための2番目の規準は、当該項目が信頼性をもって測定でき る原価又は価値を有していることである。多くの場合、原価又は価値は既知であ る。その他の場合は見積もらなければならない。合理的な見積りの採用は、財務 諸表の作成に必要不可欠であり、その信頼性を損なうものではない。合理的な見積りができない場合には、当該項目は財務諸表に認識されない。2.31 認識規準を満たさない項目が、その後の状況あるいは事象の結果として、後日になって認識されることがある。
2.32 認識規準を満たさない項目であっても、注記、説明資料又は補足的な明細表に開示することが必要となる場合がある。当該項目に関する知識が、財務諸表の利用者による企業の財政状態、業績及び財政状態の変動の評価に目的適合性を有する場合には、この取扱いは適切である。
このセクションにおいては、どういったレベル感で、上記2.27(a)に言う「可能性が高い」を判断するかは述べられていません。従いまして、IFRS-SMEs全体に亘る原則はありません。個別のセクションで定められている場合があります。たとえば、偶発債務を認識するかどうかでは、”more likely than not”というキーワードが使われ、いわゆる、50%を基準に判断するべく定められているようです。
資産、負債、収益及び費用の測定
2.33 測定とは、企業が財務諸表上の資産、負債、収益及び費用を測定するに当たり、 その金額を決定するプロセスをいう。測定には、測定基礎の選択が含まれる。本基準では、資産、負債、収益及び費用の多くのタイプについて、企業がどの測定基礎を使用すべきかを特定している。2.34 2 つの一般的な測定基礎は、取得原価と公正価値である。
(a) 資産については、取得原価は、それらを取得するために取得時に支払った 現金若しくは現金同等物の金額又は提供した対価の公正価値の金額である。 負債については、取得原価は、債務発生時に債務との交換によって受け取 った現金若しくは現金同等物の金額又は受け取った非現金資産の公正価値、 あるいは一部の状況(例えば、法人所得税)においては、通常の事業の過 程において負債を決済するために支払うことが予想される現金又は現金同 等物の金額である。償却原価は、資産又は負債の取得原価に対して過去に 費用又は収益として認識した取得原価の一部を加減した取得原価である。(b) 公正価値は、独立第三者間取引において、取引の知識がある自発的な当事 者の間で、資産が交換され、又は負債が決済され得る金額である。
認識及び測定の全般的な原則
2.35 本基準における資産、負債、収益及び費用の認識及び測定の要求は、IASB の「財 務諸表の作成及び表示に関するフレームワーク」及び完全版 IFRS から導きださ れた全般的な原則に従っている。ある取引、その他の事象又は状況に具体的に当てはまる要求が本基準にない場合は、10.4 項が判断のガイダンスを、10.5 項が当 該環境下における適切な会計方針の決定において企業が従うべきヒエラルキーを設定している。当該ヒエラルキーの第2レベルにおいて、企業は、本章に示し ている資産、負債、収益及び費用の定義、認識規準及び測定の考え方、並びに全 般的な原則を参照することが求められている。
発生主義
2.36 企業は、キャッシュ・フロー計算書以外の財務諸表を、発生主義会計を用いて作成しなければならない。発生主義においては、資産、負債、資本、収益及び費用の各項目は、それぞれの項目の定義と認識規準を満たした時に認識される。
財務諸表への認識
資産
2.37 企業は、将来の経済的便益が企業に流入する可能性が高く、かつ、信頼性をもって測定できる原価又は価値を有する場合に、資産を財政状態計算書に認識する。 当該会計期間以降に経済的便益が企業に流入することが見込まれない支出が発生した場合には、財政状態計算書に資産は認識されない。その代わり、かかる取引は包括利益計算書(又は、表示されている場合は損益計算書)において費用として認識される。2.38 企業は偶発資産を資産として認識してはならない。しかし、将来の経済的便益の流入がほとんど確実な場合は、関連資産は偶発資産ではなく、認識することが適当である。
負債
2.39 企業は、次の場合に負債を財政状態計算書に認識しなければならない。
(a) 企業が過去の事象の結果として報告期間の末日現在で債務を有しており、
(b) その決済において企業が経済的便益を有する資源の移転を要求される可能性が高く、かつ、
(c) 決済金額が信頼性をもって測定できる。2.40 偶発負債とは、発生し得るが不確実な債務、又は 2.39 項(b)又は(c)のいずれか又 は両方の条件を満たさないため認識されない現在の債務である。企業は偶発負債 を負債として認識してはならない。ただし、企業結合における取得企業の偶発負 債を除く(第 19 章「企業結合とのれん」参照)。
収益
2.41 収益の認識は、資産及び負債の認識及び測定の直接の結果である。企業は、収益を、資産の増加又は負債の減少に関連する将来の経済的便益の増加が生じ、かつ、それを信頼性をもって測定できる場合に、包括利益計算書(又は、表示されている場合は損益計算書)に認識する。費用
2.42 費用の認識は、資産及び負債の認識及び測定の直接の結果である。企業は、費用を、資産の減少又は負債の増加に関連する将来の経済的便益の減少が生じ、かつ、 それを信頼性をもって測定できる場合に、包括利益計算書(又は、表示されてい る場合は損益計算書)に認識する。包括利益合計及び純損益
2.43 包括利益合計は、収益と費用の間の算術的差額である。これは財務諸表の個別の構成要素ではなく、個別の認識基準は必要ない。2.44 純損益は、収益及び費用のうち、本基準でその他の包括利益項目に分類される収 益及び費用以外のものの算術的差額である。これは財務諸表の個別の構成要素で はなく、個別の認識基準は必要ない。
2.45 本基準では、資産又は負債の定義を満たさない項目は、純損益の測定において「対応の原則」と一般に呼ばれる概念を適用したことにより生じたものかどうかにか かわらず、財政状態計算書での認識を認めていない。
日本に於いては、費用収益対応の原則は、概念的に上位にランキングされるものであるが、すなわち、損益測定に重点を置き、収益が計上された際には、それに対応する費用も計上されるべきとする概念であるが、IFRSやUS GAAPにおいては、当該原則は上位にランク付けされません。注意が必要ですね。
当初認識時の測定
2.46 企業は本基準が公正価値等の他の測定基礎による当初認識を要求している場合 を除き、当初測定において資産及び負債を取得原価で測定しなければならない。
事後測定
金融資産及び金融負債
2.47 企業は、第 11 章「基礎的金融商品」に定義する基礎的金融資産及び基礎的金融負債を、減損控除後の償却原価で測定する。ただし、上場されているか又は公正 価値を信頼性をもって測定できる非転換型非プッタブル優先株式及び非プッタ ブル普通株式については、公正価値で測定し、公正価値の変動は純損益に認識す る。2.48 企業は一般的に、他のすべての金融資産及び金融負債を公正価値で測定し、公正 価値の変動を純損益に認識する。ただし、本基準が取得原価や償却原価など他の 基礎による測定を要求又は許容している場合を除く。
非金融資産
2.49 企業が当初取得原価で認識した大部分の非金融資産は、その後は他の測定基礎で 測定される。例えば、
(a) 企業は、有形固定資産を、減価償却累計額控除後の取得原価と回収可能価 額のいずれか低い額で測定する。
(b) 企業は、棚卸資産を、取得原価と完成及び販売までの費用控除後の販売価 格のいずれか低い額で測定する。
(c) 企業は使用又は販売目的で保有している非金融資産に関する減損損失を認 識する。
こうした低い方の金額で資産を測定するのは、企業が当該資産の販売又は使用に より回収できると期待する額よりも高い額で資産が測定されないようにすることを意図したものである。2.50 以下のタイプの非金融資産について、本基準は公正価値での測定を許容又は要求 している。
(a) 関連会社及びジョイント・ベンチャーに対する投資。企業はこれらを公正 価値で測定する(それぞれ、14.10 項及び 15.15 項参照)。
(b) 投資不動産。企業はこれを公正価値で測定する(16.7 項参照)。
(c) 農業資産(生物資産及び収穫時の農産物)。企業はこれらを見積売却費用控 除後の公正価値で測定する(34.2 項参照)。金融負債以外の負債
2.51 金融負債以外の大部分の負債は、報告日現在で債務を決済するために必要とされるであろう額の最善の見積りで測定される。
相殺
2.52 企業は本基準で要求されない限り、資産と負債、又は収益と費用を相殺してはな らない。
(a) 資産を評価性引当金(例えば棚卸資産陳腐化引当金や貸倒引当金)控除後で測定することは相殺ではない。
(b) 企業の通常の営業活動において投資や事業資産を含む非流動資産の売買が含まれない場合、企業は当該資産の処分による利得又は損失を、処分代金から当該資産の帳簿価額と関連する販売費を差し引いて報告する。